アーツセラピスト事情

日本では、まだ資格制度の整備はされていません。 公の資格をとって働きたい場合は、 海外で資格を取り、(しかしその資格は日本では通用しません) 海外でそれを利用して働くか、日本で理解を示してくれる施設等を探して働くしかありません。
ヨーロッパの方では国家資格として認められている国もあれば、 アメリカでは州によって認定資格があるようです。
いずれにしても、心理学か芸術学のベースをもって大学を出て、さらに大学院で2年間学び、その後にトレーニングを積んで、やっと認められるという、きびしいものです。

そのようなきびしさを乗り越え、トレーニングを積み、日本へ戻って来て、たくさんの事を伝えてくれているすばらしいアーツセラピストの方達もいらっしゃいます。
しかし、残念なことに、彼らの取得した資格は、日本では公的に認められておらず、又 アートセラピスト(アーツセラピスト)の資格を持っている人を病院や公的機関が募集していることも、ほとんどありませんので、おのおのが自分で仕事の場をみつけていくことになります。

 

どのように学ぶのか?

現在、日本では海外のようなプログラムを提供している大学はありま せん。 臨床心理系の大学や芸術系の大学で、一部に芸術療法を取り入れているところもあるようですが 一貫してアーツセラピストをめざすカリキュラムを取り揃えている大学はまだないと思います。

私が学ばせていただいた関則雄先生のされている日本クリエイティブアーツセラピーセンターでも、

臨床家を対象に2年間のトレーニングコースが用意されています。

また、ナタリー・ロジャーズが設立したPerson-Centered Expressive Therapy Instituteを引き継いだ表現アートセラピー研究会のアーツセラピーのトレーニングコースもあります。

 

少しずつ学べる環境は増えてきてはいますが、学んでからの実践の場もほとんどなく、ボランティアなどをしながら臨床経験を積んでいくことになりますが、そういった場所も、自分で開拓することが必要です。

海外では臨床の現場も数多くありますから、一貫して学ぶなら、海外 の大学、大学院で、となってしまいますが 多くの方にとって、それはとても大きなハードルです。
また、日本のアートに対する文化的な考え方が欧米とは違うので、海外で学んできたことをそのままに適応するのは難しそうです。

 

 

学び始めたころは海外の大学院に行き、本格的にアーツセラピーを学んでみたい

そう思うことはありましたが、私自身もこのハードルを超えて学ぶ事を選べませんでした。

 

アーツセラピストの資格

日本では公的な資格はなく、民間の資格のみです。
2日で資格がとれるというものもあれば、トレーニングを積んで数年かけてとるものもあり、民間団体が各々の基準で認定を出していますので、一定の基準がなく、玉石混交の状態です。
芸術療法学会では「芸術療法士」、描画療法学会では「認定描画療法士」といった資格制度も導入されてきていますが、 セラピーを受ける側が判断するのは少しむずかしそうです。

では、いったいどうすれば・・・。

海外から戻ってきた何人かのセラピストの方達にお会いすると

いつも、とてもパワフルで、魅力にあふれているので、

海外でのプログラムは日本では体験できないような、すばらしいものに違いない!

ほんとうに、しっかりと理論と実践を学ぶには、海外に行くしかないのかもしれない!

長きに渡り、私はそう信じていました。

 

そうは思っていても、前述の通りその選択はできず

(これは私個人的に英語のトラウマがあったからなのですが)、

日本で出来る限りの事をして、学ぼうと十数年つづけてきました。

 

臨床心理学、芸術学、様々なアートの表現技法、

海外でトレニングを受けて戻ってきたアーツセラピストさんたちのワークショップにもどんどん参加しました。

 

受けるだけでなく、自分自身でもボランティアでいろんな方達にアートワークを提供し、

時には失敗もしながら、その都度必要な学びをとりいれて、ひたすら突っ走ってきました。

 

さすがに十数年続けてやっていると、それなりの力はついてきたようで、

少しずつ周囲からも認められるようになり、結果も出すことができるようになってきました。

 

しかし、ある時ふと、気づいたのです。

 

「海外で学んできた友人たちが魅力的なのは、プログラムがすばらしいという理由ではなく

この人たちは、もともとモチベーションが高く、最初に高いハードルを越えて出発した人達だから、

パワフルで素敵なのはあたりまえだ。」

 

そう、海外のカリキュラムが優れている訳ではなく、彼らが一人一人が優れていただけだったのです。

目から鱗とはこのことでした。

 

 

そう考えると、自分が失敗しながら十数年かけてきたことを、無駄を省き、

もっとシンプルに、短期間でお伝えしたい、そんな気持ちになってきました。

 

日本でも本格的なプログラムを作る事は可能であり、

むしろ、日本人にあったアーツセラピーを学ぶプログラムを作ることが可能だと思えてきました。

 

なんせ、私は海外に行かず、日本で、ずっと日本人を対象にやってきて、

日本の文化的なところと繋がったアーツセラピーを提供してきたのですから。

 

じつは、海外のアーツセラピーのワークショプに参加すると

パーソナリティーも、文化的背景も、感性も違うため、ワークショップの中での反応も全く違っていて

驚く事がよくありました。

 

アート表現に対する姿勢も全く違います。アートがもっと身近で楽しく気楽に扱われています。

日本ではなかなか気楽にアート、というわけにはいきません。

ですから、そこが浸透しにくいネックになっている部分でもありますが

逆にとてもアートのプロセスを慎重に細やかに体験していけるのです。

 

日本人独特の細やかな感受性を大切にしたセラピーの提供が必要なんだと思います。

そのようなアーツセラピーをお伝えして、一緒に広めていってくれる人たちを育ててみたい

そんな熱い思いが湧いてきている今日このごろです。